おはようございます!営業部Fです。
今日はKino Floのウェブサイトの掲載されていたMIMIK 120解説ブログを日本語に訳した記事を書いていこうと思います!
オリジナル記事はこちら↓
Introduction to Kino Flo MIMIK 120 and Macthmakker Technology by Noah Kadner
内容盛りだくさんのため通常より長くなるとは思いますが、みなさま最後までお付き合いいただけますと幸いです。
・MIMIK 120とMatchmakkerテクノロジーについて
バーチャルプロダクション(以下、VP)における大きな課題の一つとして常に挙げられるのがLEDウォールからの光だけではリアリティのあるフルスペクトラムな明かりは作り出せないという点です。
*補足:一般的にLEDウォールはRGB 3色で構成されており人に当たったときに赤みが強く出て、ピンクっぽい肌の色になる傾向にあります。
完成した映像を見る視聴者の目は本能的に、現実空間で撮影された映像と同じように俳優や被写体はその場に降り注がれる光の中に存在していると信じようとします。
しかしフルスペクトラムで自然な色味を再現し、尚且つ背景とマッチした動きの光を作り出すことは非常に難しく、スタジオのLEDウォールの明かりだけでは達成できません。
*補足:そのためVPで背景がどんなにリアルでも照明がその背景と合っていないと、自然と違和感を覚える映像になってしまいます。
MIMIK 120はビデオプロセッサーを使用した最先端の技術により、ビデオ信号から正確な色味と照度を導き出すことによりこの課題を解決します。
LEDウォールがRGB 3色の素子で構成されているのに対してMIMIKはRGBにクール・ウォーム 2色のホワイトを追加し、5色を出力することでRGBでは達成できないスペクトルの部分を満たすことができます。
MIMIKは10ミリピッチの7200ピクセルで構成され、色味だけでなく明るさにもこだわり、最大で10,000nitsまで出力します。
複数台を連結することも可能で、様々なシーンに対応します。
・コアテクノロジー:Matchmakker
Matchmakkerは特許取得済み(アメリカ)の技術で、3色の信号を5色に変換します。
このソフトウェアはビデオプロセッサーのハードウェアを活用し、受信するRGB 3色のビデオ信号を5色に変換しそれぞれのLED素子に送ります。
背景の映像とその前にある俳優やセットに当たる光を調和させることで、現実にある空間で撮影されたかのようなリアリティのある映像を作り出します。
・ビデオ信号をベースにしたワークフロー
ビデオプロセッサーを介したMIMIKの制御は、今まで誰も聞いたことのないレベルのスピードとシンクロ性を可能にし、従来のDMXのキャパシティを優に超えます。
MIMIKは、VP業界のトップ企業であるMegapixel VR社製の”HELIOS” LEDプロセッサーでのみ制御が可能です。
ビデオプロセッサーをベースにしたワークフローは、3色のビデオ信号を照明用の5色に変換するだけでなく、サブフレームマッピングなどの次世代技術にも対応します。
例えば30kHzのリフレッシュレートとサブフレームごとのシンクロを応用して、MIMIKは複数の照明の動きを1台で同時に出力できます。
例えば、カメラ①にはインカメラVFXの背景が、カメラ②にはグリーンスクリーンが見えるようにリフレッシュレートを変えてLEDウォールとカメラが設定されている撮影環境の中で、MIMIKはその設定に対応しそれぞれのカメラにとっての背景に完全に一致した照明を捉えることができます。
また、従来の照明卓と組み合わせて使用することも可能です。
どのような使い方が求められていてもそれに対応できる柔軟性により、MIMIKはプラグアンドプレイ(接続すればすぐに使える)ソリューションとして様々なワークフロー、人員構成にもシームレスに統合することができます。
1台のHELIOSプロセッサーは最大3800万ピクセルに対応しており、非常に複雑な照明セットアップを可能にします。
ステージとプロセッサーの距離が離れていてもLANケーブル1本で即座に信号を送り出します。
それでは上記の基本的なMIMIKのテクノロジーを踏まえてそれをどう撮影に使用していくか、効果的な使用例を以下で紹介していきます。
・効果的な使用例:ドライブシーン
LEDウォールのある環境でしか使用できないという訳ではありませんが、やはりMIMIKの良さを効果的に感じることができるのはVPの現場です。
ドライブシーンを撮影する際、一般道での撮影と比較して利便性と安全性の高いVP撮影は広く普及しています。
しかしVPでのドライブシーン、特に夜のシーンの撮影で、説得力のある照明を作り出すことは非常に難しく大きな課題の一つでした。
例えば、背景映像に街頭やその他の明るい物体(ビルや看板等)が現れるたびに、視聴者の目は当然それらが車や車内にいる俳優の顔にも映り込むことを、無意識に期待します。
照明としての従来のアプローチは特別に作成した照明用器具を手動で動かしたり、複雑なシーンを照明卓で組む必要がありました。
これらの作業は大変な労力が必要なだけでなく、必ずしも正確でないため、複数の撮影日やテイクにわたって何度も再現することが難しいという課題がありました。
MIMIK 120はHELIOSプロセッサーとMatchmakkerを介し、映像を照明のソースとして使用することで、背景とサブフレームレベルで同期し正確かつ何度でも再現可能なエフェクトを提供します。
その結果、VP撮影にとって完璧かつ効率的な照明オペレーションを可能にし、各テイクの最初から最後まで継続的に使用可能な映像を作り出すことができるのです。
・効果的な使用例:Ghostframe
Ghostframeは、タイミングを合わせることで同じLEDウォールから複数台のカメラが、それぞれ違うコンテンツを捉えることができるよう設定するビデオプロセッサーの技術です。
例えば1台のカメラで動きのある3Dアニメーションの背景をキャプチャし、もう1台のカメラではグリーンスクリーンをキャプチャすることでポストプロダクションでの柔軟性を保つことができます。
または2台のカメラが捉える範囲をオーバーラップさせて同時に複数のインカメラエフェクトをキャプチャすることも可能です。
Ghostframeは人の目がLEDウォールを見た時に1つの映像だけを映し出し、他のカメラにしか見えない映像を同時にLEDウォール上に、いわばゴーストのように映し出しています。
カメラモードはゲンロックとカメラシャッタースピードを利用して異なるサブフレームスライスをそれぞれのカメラに同期させます。
スタジオクルーからはLEDウォール上に常に1つのコンテンツが見えていますが、実は1秒間にそれぞれのカメラに30もの異なるビデオソースを送っています。
MIMIKはそのサブフレームワークフローに対応し、それぞれの背景映像に相応しい照明効果を各カメラが捉えられるように働きます。
このカメラモードは複雑なものに聞こえるかもしれませんが、設定自体はとても簡単です。
そしてこの技術によって様々なことが可能になります。
例えば、主演の俳優の撮影時間がタイトな時にも、1回のテイクで様々な背景を撮影できることができるため、限られた時間の中で達成できる完成映像の量を大幅に増やすことができます。
また、インカメラVFXの重大な課題の1つである撮影した映像をポストプロダクションの際に変更する必要がでてきてしまった場合も、先述のようにグリーンスクリーン背景で撮影をしておくことで編集が容易になります。
サブフレームマッピングはVPのための最善のソリューションになりえます。
MIMIKは本日紹介した以外にも様々な効果的な使用例があり、それは今後のブログにて紹介していきます。
以下のセクションでは、イメージベースライティングと既存の照明器具のワークフローを比較していきます。
・MIMIKと従来のLEDパネルの比較
初期につくられたLEDスタジオには、天井にLEDウォールを設置し照明として使用する方法が多く見受けられます。
カメラが捉えることもないためピッチが細かくないLEDウォールを環境光として使用するのです。
このアプローチは環境光として大まかには効果があるように思えましたが、従来のLEDパネルはRGB3色の素子で構成されるため、低い演色性、不正確な肌の色、セットや衣装もカメラ上で正しい色で表示されない等の課題が残りました。
MIMIK 120は、RGBとホワイト2色のLEDを組み合わせることで、より幅広いカラースペクトルを表現でき、正確な肌、小道具や衣装の色を再現します。
MIMIKは、一般的なLEDパネルよりもはるかに演色性に優れ、1台あたり7200あるピクセルによってニュアンスのある照明効果を実現する。
また、高い輝度と最大30Hzのリフレッシュレートで、よりダイナミックな照明効果を可能にしました。
・MIMIKとDMX/ピクセルマッピング照明の比較
MIMIKが発売されるまで、VP用のフルスペクトルな照明はDMX制御のシネマライトが担っていました。
ピクセルマッピングアプリと連動させ、オペレーターはビデオ信号から取り出すエリアを決め、インテンシティやRGB、CCT、その他の色のDMX信号を送り器具を制御していました。
ピクセルマッピングが施された照明器具は幅広い色味を出力し演色性を高く保つことはできますが、そもそもDMXはサブフレームレベルの正確さやハイスピードの信号に対応できるように設計されていません。
また、DMXは1ユニバース512チャンネルしかありません。
MIMIKはMatchmakkerにより、そのような制限、課題を克服しながら、DMXでは気が遠くなるような7200ピクセルを制御します。
また、ビデオプロセッサーを介した制御により、ピクセルマッピングやDMXでのアプローチでは到達できないGhostframeのような技術にも対応できるのです。
まとめ:光の速さのクリエイティビティ
MIMIK 120は、フルスペクトラム、革新的なスピードとシンクロ能力を備えたイメージベース照明器具です。
今後この機材がどのような現場でどのようなクリエティビティを発揮していくかは、このブログシリーズの続きでご案内していこうと思います。
本シリーズでは、MIMIKだけでなく照明全般の情報を共有していきます。乞うご期待。
最後に締めの言葉を…
“Anything is possible with creativity at the speed of light.”
光の速さのクリエイティビティさえあれば、どんなことでも可能だ!